〈学美の世界 15〉創造―本当の豊かさへの探求/金潤実 2020.2.7

 

https://www.chosonsinbo.com/jp/2020/02/sinbo-j_200210/

 

学生美術展は子どもたちの自由で自主的な創造を促す。

「自由に」描く・造るとはどういうことか。自由とは「何でもあり」なのか。創作するうえでの自由とは、ものごとの枠組みを自ら組み立て選択すること、その選択(自分自身の表現)を他人に委ねず自分で引き受けること。

美術は社会の中でいわゆる「役に立つ」ものではないだろう。直に生活が便利になったりしない。だが便利か便利じゃないか、役に立つか立たないか、そんな他人に決められたものさしではなく、自分自身で価値を生み出すことができる。「便利さ」で人も社会も測られてしまう現代において、創作とは本当の豊かさへの探求なのかもしれない。

学美は、子どもたちの自由で豊かな想像・創造の探求の場なのだ。

 

 

作品1「未完の春」。第48回展・特別金賞。大阪朝高・高級部3年生:金時星

 

観音開きになっていて外と内との両方を観ることができる大作である(作品1)。

外側の扉には卒業写真のような人物たちと阿修羅の像が描かれ、扉を開くとまるで絵巻物のような絵画空間が広がる。木肌を残して描かれている画面からは、作者が制作する過程で向き合った時間、思考、感覚がそのまま画面に宿り息づいているようである。

誰にでも経験するような過去・現在・未来への葛藤。それでも明日は来るのだと言わんばかりに、中心から朝日が仄かに光を差している。文学的でもある濃厚な作品だ。

高校生ともなると思考の多重な要素が作品に反映されるので、指導教員でも全容を説明できない。ぜひ各地の学生美術展や美術部展に足を運び、作者自身から作品の話を聞いて感じてほしい。

 

 

作品2「人生」。第42回展・優秀賞。和歌山初中・中級部3年生(当時):李沙蘭

 

将来や進路の壁に初めてぶつかる、高校生になる直前の中学3年生。

そんな多感な時期に思い描く「人生」。

黒と白とがとても映えるこの作品は、画面の美しさに心打たれると同時に、この時期にしか描けないまっすぐな作者の視線を感じられる(作品2)。

木の枝はどこがつながっているのかわからないくらい幾つにも枝分かれし、まっすぐな道はない。

どこへでも行け、且つどこへも行けない、不安と期待とが混ざりあう未来への展望。そんな悩んでいる自分自身のことをも俯瞰して見つめる、等身大の姿が見えてくるようだ。

この作品を最後まで描き切った作者に拍手を送りたい。

 

 

作品3「ベビーカー4号」。第41回展・学美賞。中大阪初級・初級部3年生(当時):洪天

 

美しい色彩が目を惹く作品である(作品3)。

題名を見ると中心に描かれているロケットはベビーカーらしい。そこは小さな子どもの昆虫が乗っていて、周りには大きな大人の昆虫たちがそれを見守っている。

子どもが持つ、生き物への好奇心、愛情、観察力。

ロケットは親元を離れどこへ飛んで行くのだろうか。子どもの昆虫は作者自身の投影かもしれないし、幼き日の私たちかもしれない。

子どもは無限の可能性を持っている。大人が勝手に枠を当てはめなければ、子どもは誰でもどこへだって行ける。画用紙1枚から、想像力をもって、枠を超え、広大な表現の空へ飛び立つ。

 

(在日朝鮮学生美術展中央審査委員、中大阪初級・大阪朝高図工美術講師)