〈学美の世界 6〉子どもと教師の「信」と「愛」の世界/郭栄姫 2019年3月25日号

 

https://www.chosonsinbo.com/jp/2019/03/sinbo-j_190325-2/

 

在日朝鮮学生美術展は、朝鮮学校で学ぶ児童・生徒の姿が可視化された誇り高い作品展だ。30余年、美術教育に携わってきた私は、時代と共に移り変わる子どもたちの感性、表現に毎回、舌を巻くばかりだ。見せる側と見る側がこんなにも一体化する展覧会は他に探すことはできないと自負している。

子どもたちは皆、創造性と感性、学ぶ意欲を持っている。図工、美術はまさしく生徒と教師の寄り添いの世界。つまり生徒と教師の間に「信」と「愛」があってこそ成り立つのだ。そんな寄り添いの環境の中で制作された作品を観て「どの作品にも巻き込まれて、じっと凝視してしまう」。

高校生のクラブ作品を観ては、「視点や葛藤する姿に胸が熱くなった」。このように、感銘を受け賛辞を寄せられる方々が、後を絶たないのである。

 

 

作品1「玉入れ」。第47回学美・優秀賞。東春初級・初2:孫啓東

 

学校のグラウンドは、水はけが悪く大雨の後は水たまりだらけになることが多い(作品1)。

この絵からは、そんな学校のグラウンドの、梅雨間近の運動会の様子が伝わってくる。

ひんやり湿ったグラウンド。

泥だらけになりながらはしゃぐ子どもたちの歓声。

遠くに見える太陽にも届く勢いで高く投げ入れられる玉。ポーンポーンと心地よいリズムを感じさせる。

低学年の頃には、体験を臨場感たっぷりに描き上げる絵が多く見られる。

それは、子どもたちが体験を楽しみ、その中で学び確実に成長している軌跡のように思える。

 

 

作品2「普通、急行、特急」。第47回学美・優秀賞。豊橋初級・初6:李祥旗

 

刷毛で描かれた墨絵だ(作品2)。

かすれや濃淡から、なんの迷いもなく手に筆をとり勢いよく描く姿が目に浮かぶ。

「普通、急行、特急」と,つぶやきながら描いたようだ。子どもたちのつぶやきには、「作者」の考え、心が表れる。

つぶやきながら、自分の考えを確実な物として形で表現するのであろう。

こんな、つぶやきに耳を傾ける先生。

図工の時間、何を語り合っただろう?

寄り添う姿も伺える。

「普通、急行、特急」と、私たちもつぶやいて絵を観てみよう! 本当に電車に見えてくる。墨のかすれが速度感をいっそう、増している。

 

 

作品3「歴史的な4.27」。第47回学美・優秀賞。岐阜初中・中2:金夏娜

 

歴史的な「北南首脳会談」!(作品3)

祖国(母国)の民はもちろん、海外同胞―とりわけ在日朝鮮人たちは万感の思いでこの瞬間を目にしたであろう。

歌「祖国賛歌」にこんな詩節がある。

 

…雲の上に鷹が飛び

木蘭花 咲いた 河山

気高く 美しい 朝鮮の姿…

 

「作者」は日頃、口にした歌詞と統一チョソンを思い浮かべる自分の気持ちが重なったのであろう。

チャンメ(鷹)は、北の「国鳥」である。カチ(かささぎ)は、南の「国鳥」である。互いの象徴となる、二羽の鳥が赤い糸でむすばれている。切っても切れない我が民族の絆を表している。

画面中央、ハートの中には、北南の首脳が手を繋ぎ歩き渡った板門店が描かれている。

待ちに待った、北南首脳会談を自分の目で見られたことを心の底から喜び、激しく高鳴る気持ちを、表現したのだろう。

互いに固く握った手を、永遠に記憶し、統一祖国の担い手としてもっともっと学んでいこうとする「作者」の思いが伝わる清々しい作品である。

 

(在日朝鮮学生美術展中央審査委員・岐阜初中美術教員)