〈学美の世界 17〉子どもの変化、成長を感じたい/李英心 2020.4.17

 

https://www.chosonsinbo.com/jp/2020/04/sinbo-j_200420/

 

児童・生徒たちの作品は、年を経るごとに、作者の素直な気持ちがよりいっそう強く伝わってくるように感じる。児童・生徒たちの素直で素朴な思いが込められた作品に触れると、頬が緩み、心打たれ、深く考えさせられたりする。

私は、創造性豊かで迫力満点の児童・生徒たちの世界を、作品を通じて垣間見ることのできるこの場を、毎年楽しみにしている。

ウリハッキョに通う子どもたちは、民族教育を通じて育まれる民族的情緒を、さまざまな場面で表現している。私は、これからも末長く「学校」でのさまざまな経験を通して得た子どもたちの心の変化や成長を、作品から感じていきたいと思う。

 

 

作品1「心を一つに、咲かせよう! ニワトリの種」。第48回学生美術展・優秀賞。東京第2初級・初級部5年:李侑那

 

すっきりとした青空が描かれている画面の下半分に、光り輝く「ニワトリの種」(作品1)。

大きなニワトリと小さなニワトリたちが力を合わせ、種を咲かせようと頑張っているようだ。

白い背景に一段と鮮やかに写る赤と青のエネルギーは、身体を巡る動脈と静脈のようでもあり、生きる力が感じられる。ニワトリたちの思いを受け取ってか、種もいっそう光を放っているようだ。

真ん中のひときわ大きなニワトリはエネルギーを注いでいるようでもあるが、種の成長がニワトリ自身の成長を表しているようにも思われる。そんなニワトリたちを、輝く星や花、太陽や月が温かく応援しているかのようで、これからどんな花を咲かせるのか。楽しみだ。

児童の清々しく素朴な気持ちを表現したこの作品は、期待感と共に一緒に応援したくなる作品だ。

 

 

作品2「色々なイスの中の自画像」。第48回学生美術展・優秀賞。東京中高・中級部3年:高潤那

 

さまざまな椅子が描かれたこの作品(作品2)。

椅子を一つひとつ丁寧に描いた画面からは、椅子の特徴や形など、考えながら色を塗っていく学生の姿が目に映るようだ。

色とりどりの椅子は、整列させることによって、それぞれの個性がより際立って見える。こういう椅子があったらいいな、自分ならどの椅子がいいかなと、見ている側も楽しんでついつい選んでしまう。

そんな椅子たちの真ん中に、一つだけ目に留まるクッション。

これからどの椅子に座ろうかと考え見極めているのだろうか。もしくは、この中の椅子のどれにも当てはまらない、自分だけの椅子を探し求めているのだろうか。

見れば見るほどいろいろと想像を膨らませることができる、味わいのある魅力的な作品だ。

 

 

作品3「何を見ている?」第48回学生美術展・金賞。東京中高・高級部2年:河慶恵

 

鋭く突き刺さるような眼が印象的な作品(作品3)。

大きな眼を向けるこの作品は、何を見ているのか、見る人に何を訴えるのか。

青い画面いっぱいに、散りばめられた言葉は主張する。

常に新しい情報が発信され続ける世の中で生きる私たち。ネットやSNS等を通じ手軽に得られる情報は生活をより豊かにするだろう。しかし、ぼう大な量の情報の中でどの情報を選び、どのように受け取るのかによって、人の気持ちや考えがまったく変わってしまう。

そんな危惧の念を抱いた作者の思いが伝わってくる。

何が正しく、真実なのか。

漂うような言葉の中から、自らが真実を見極めなければならないという作者の投掛けに、自分はどうかと深く考えさせられる作品だ。

 

(在日朝鮮学生美術展中央審査委員・東京第2初級美術教員)